ベイブレードの大会やSNSを見ていると、よく耳にする言葉があります。
「このベイ、調整してます」
……調整? 何だそれ?
パーツを組み立てた時点で完成ではないの?
同じ名前のパーツを何個も買わないとできないの?
そう思う方も多いのではないでしょうか。
店主も最初は、調整と聞くと「ものすごく細かな違いが分かる上級者だけの世界」という印象がありました。
しかし、実際にベイブレード上級者やトップ選手のインタビューで話を伺ってみると、調整の入口はもっとシンプルです。
手持ちのパーツを組み替え、向きを変え、どの組み合わせが安定して回るのかを比べてみる。
まずは、ここから始まります。
最初から細かな違いを言い当てる必要はありません。
「こっちの方が少しきれいに回っている気がする」
そのくらいで大丈夫です。
自分で回し、自分の目と耳で違いを探し、自分なりの1機を作っていく。
シュート技術と同じように、ベイを観察して理解することも、初心者から一歩進むための大切な経験です。
今回は、2025年レギュラークラス日本一となった13-ミナト選手のお父さん、13-まさまささんから伺った具体的な手順を土台に、Mokky選手、おまんじゅうキング選手の考え方も交えながら、ベイブレードXの調整方法を初心者向けに解説します。
- ベイブレードXのカスタムと調整の違い
- ブレが少ない状態とは何か
- 手持ちのパーツで始める調整の5つのポイント
- 調整のやり方は1つではない。選手によって異なる調整の順番と考え方
この記事で扱う「調整」について
正規パーツの組み合わせや取り付ける向きを比べる方法を扱います。パーツを削る・曲げるなどの加工方法を紹介する記事ではありません。大会へ参加する場合は、最新の公式レギュレーションもあわせてご確認ください。
ブレード・ラチェット・ビットの役割から確認したい方は、先に初心者向けガイドをご覧ください。
「調整」とはコマの特性を安定して発揮しやすくするプロセス
カスタムは「種類を選ぶ」、調整は「安定する組み合わせを探す」
まずは、カスタムと調整の違いを整理します。
- カスタム:使うブレード・ラチェット・ビットの種類を選ぶこと
- 調整:手持ちのパーツの向きや組み合わせを比べ、ブレの少ない安定した1機を作ること
たとえば、同じウィザードロッド3-60Bというカスタムでも、使うブレード・ラチェット・ビットの個体や、ラチェットを取り付ける向きによって、回り方が変わります。
カスタム名が同じだから、動きもすべて同じ。
……とは限らないんですね。
そこで、手持ちのパーツを一つずつ組み替え、より安定して回る組み合わせを探します。
強いカスタムを知ることが「選ぶ」作業なら、そのカスタムを自分の手持ちで安定させることが「調整」です。
「ブレが少ない」とは、余計な揺れや振動が少ない状態のこと
ここでいうブレとは、ベイを回したときに出る余計な揺れや振動のことです。
優しく回して観察したときに、次のような状態であれば、比較的ブレが少ないと考えられます。
- 回転軸が大きく揺れにくい
- ベイ全体が上下へガタガタ動きにくい
- 回転の早い段階で姿勢を崩しにくい
- 複数回試しても、似た回り方になりやすい
ただし、ブレが少ない=スタジアム内を動かないという意味ではありません。
アタックタイプのビットで走り回ることや、Xダッシュへ入ることは、本来狙っている動きです。
調整で抑えたいのは、その動きを邪魔するような余計な揺れです。
アタックベイをきれいに回したら、おとなしくなってしまうのでは?と思うかもしれません。
安心してください。アタックベイは、ビットとスタジアムがしっかり元気に走らせてくれます。
元気とガタガタは、似ているようで別物です(笑)。
重心バランスが整うと、ベイの持ち味を発揮しやすくなる
ベイブレードは、回転する独楽(コマ)です。
回転軸に対して重さが大きく偏っていると、回るたびに特定の方向へ引っ張られやすくなり、揺れや振動として現れることがあります。
反対に、重さの偏りが小さく、回転軸を中心にバランスよく回れば、姿勢を保ちやすくなります。
ここでいう「重心バランス」は、単に重心が低いか高いかだけではありません。
回転軸に対して、重さが一方向へ偏りすぎていないか。
この横方向のバランスも含めた話です。
ブレが少なくなることで、タイプごとに次のようなメリットが期待できます。
- スタミナタイプ:余計な揺れによる回転の消耗を抑え、終盤まで回転を残しやすくなる
- アタックタイプ:攻撃できる時間や回数を残し、飛ばせなかったあとのスピン勝負にもつなげやすくなる
- ディフェンスタイプ:相手の攻撃を受けたあとも、姿勢を残して本来の守りを発揮しやすくなる
もちろん、ブレが少なければ必ず勝てるわけではありません。
ブレードの形状、重量、ビットの動き、シュート、相手との相性など、勝敗を左右する要素はほかにもあります。
それでも、各パーツが持つ性能を発揮するためには、まず安定した土台を作ることが大切です。
調整は、すべてのタイプが自分の役割を果たしやすくするための土台づくり。
重心の高さ、摩擦、空気抵抗、終盤に首を振るような動きまで、独楽(コマ)の仕組みから深掘りしたい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
調整は「手持ちのパーツから答えを探す」作業
調整と聞くと、同じパーツを何個も買い集め、良い個体だけを探す作業を想像するかもしれません。
たしかに、パーツが増えれば比べられる組み合わせも増えます。
しかし、調整の第一歩は大量に買い足すことではありません。
まずは今持っているパーツで、
- ラチェットの向きを変える
- 手持ちのビットを付け替える
- 同じ条件で複数回回してみる
- どちらが安定して見えるか比べる
ところから始められます。
最初は「違いが分からない」が普通です。
でも、何度も回していると、少し音が違う、こっちは軸が静か、終盤の崩れ方が違う、といった小さな変化が見えてきます。
その違いを探す時間が、自分のベイを理解する時間になります。
シュート技術を磨くこと。
そして、自分の独楽(コマ)をよく見て、愛着を持つこと。
どちらも、初心者から一歩進むための大切な入口だと思います。
初心者が押さえたい、ベイブレード調整の5つのポイント

ポイント①:買い足す前に、手持ちのパーツで比べる
まずは、調整したいカスタムを1本決めます。
たとえば、ウィザードロッド3-60Bを使いたいなら、その3パーツを基準にします。
同じ種類のパーツを複数持っていなくても大丈夫です。
ラチェットの向きを変えたり、手持ちの別のビットを試したりするだけでも、回り方の違いを確認できます。
パーツを買い足すのは、今ある組み合わせを比べてからでも遅くありません。
調整は、買う作業ではなく、比べる作業。
まずは、このくらい気軽に考えてみてください。
ポイント②:優しくシュートし、同じ条件で複数回見る
ブレや軸の動きを確認するときは、いきなり全力でシュートしません。
強くシュートすると、着地の衝撃やスタジアム内の動きが大きくなり、パーツそのものの揺れを見分けにくくなるためです。
最初は優しく回し、次の点を見ます。
- 軸が大きく揺れていないか
- ベイ全体が上下へ動いていないか
- 回転の早い段階で傾いていないか
- 終盤まで姿勢がどう変化するか
また、人がシュートする以上、毎回まったく同じ回転にはなりません。
1回きれいに回っただけで「これが最強個体だ!」と決めるのは、少し早めです。
同じスタジアム、同じ位置、同じくらいの強さを意識して、複数回試します。
一度だけ最高の回り方をした組み合わせより、何度試しても似た動きをする組み合わせを残していきます。
ポイント③:一度に変えるのは一つだけ。向きも比べる
調整で迷子になりやすいのが、ブレード・ラチェット・ビットを一度に全部替えてしまうことです。
全部替えたら、たしかに動きは変わります。
でも、何が理由で変わったのかも全部分からなくなります。
原因までまとめて行方不明です(笑)。
基準となる組み合わせを決めたら、変更するのは一つずつにします。
- 基準となるブレード・ラチェット・ビットを決める
- ラチェットだけを替えて比べる
- 候補が決まったら、ビットだけを替える
- 同じパーツでも、ラチェットの向きを変えて確認する
調整の順番は、このあと紹介するように人によって異なります。
それでも、何を固定し、何を変更したのかを分かる状態にすることは共通しています。
特にラチェットの向きは、同じパーツが1個ずつしかなくても試せる調整です。
まずは、ブレードに対してラチェットの向きを変え、2パターンを確認します。

ブレードとラチェットの候補を絞ったら、次はビットの向きを変えて確認します。

※かみ合わせや離れにくさだけで良し悪しを決めず、実際に回したときのブレ・軸・音・姿勢もあわせて確認してください。
このように、同じパーツでも向きを一つずつ変え、どの組み合わせが安定して回るかを比べていきます。
【深堀り】ブレード・ラチェットの密着性について
- ブレード・ラチェットを組み合わせた状態でひっくり返した際、離れなかったパーツは公式大会(ベイチェック)で弾かれることがあります。
- 組み合せによっては起こりうる事象で、一見、密着性が高く、よいカスタムができた!!
と思ってしまいそうですが、完全に密着してしまうパーツは、逆にエラーパーツとして見られる(採用できない)場合があるので注意が必要です。
ポイント④:揺れ・軸・音・シュート直後の挙動を見る
調整では、何秒回ったかだけを見ればよいわけではありません。
見るポイントは、もう少しあります。
- ガタつき:組み立てたときに、パーツ同士が大きく動かないか
- 揺れ:回転中にベイ全体が大きく振れていないか
- 軸:中心が安定し、急に傾いていないか
- 音:比較した組み合わせで、風切り音や振動音に違いがないか
- 最初の挙動:シュート直後の数秒間に、余計な暴れ方をしていないか
- 終盤の姿勢:回転が弱くなったあと、どのように傾き、倒れていくか
音については、「この音なら絶対に良い」という共通の正解があるわけではありません。
同じ条件で比べたときに、音が大きく変わったか、余計な振動を感じる音が増えたか、といった相対的な違いを見ます。
見た目だけでは分かりにくい違いを、耳が教えてくれることもあります。
2024年G1福岡優勝、日本4位の実績を持つMokky選手も、調整時の判断材料として、回したときの音とシュート後の最初の挙動を挙げています。
詳しい回答は、後半でも改めて紹介します。
ポイント⑤:良い組み合わせを記録し、最後は実戦で決める
調整を続けると、組み合わせがどんどん増えていきます。
そして、かなりの確率でこうなります。
「さっき良かった向き、どっちだったっけ?」
これはもう、調整あるあるです。
良かった組み合わせが見つかったら、次の方法で記録します。
- ラチェットの位置へ目印を付ける
- 組み立てた状態を写真に残す
- ブレード・ラチェット・ビットの組み合わせをメモする
- 候補へ1番・2番・3番などの番号を付ける
そして、最後は実際に戦わせます。
単独で最もきれいに回るベイが、対戦でも必ず一番勝つとは限りません。
相手とぶつかったときに、
- 攻撃を受けても姿勢が残るか
- 狙った攻撃回数を作れるか
- 終盤まで回転を残せるか
- 同じ相手へ複数回試しても通用するか
を確認し、最終的な1番機を決めます。
一人で対戦確認をする場合は、先に打つベイと後に打つベイを入れ替え、シュート順による差も減らしていきます。
- 調整したいカスタムを1本決める
- 優しく回し、今のブレ・軸・音を確認する
- パーツか向きを一つだけ変えて複数回比べる
- 良かった組み合わせへ目印や記録を残す
- 候補同士を戦わせ、実戦で使う1機を決める
具体的な調整手順は、13-まさまささんの記事で確認できます
2025年レギュラークラス日本一となった13-ミナト選手のお父さん、13-まさまささんには、ウィザードロッド3-60Bを例に、具体的な調整手順を伺っています。
その流れを短く整理すると、
用意する → 比べる → 候補を残す → 向きを試す → 目印を付ける → 実際に戦わせる
という積み重ねです。
特に印象的なのは、最初から難しい測定を求めていないことです。
「こちらの方がガタつきが少ない気がする」「きれいに回っている気がする」という、自分なりの感覚から候補を残してよいと話されています。
そして、候補を絞ったあとは向きを変えて比較し、良い位置へマーキング。最後は実戦で順位を決めます。
パーツを用意する数、候補の絞り方、1番機から3番機までを決める詳しいステップは、こちらの記事をご覧ください。
ウィザードロッド・3-60・Bビットが1個ずつしかない場合でも、ラチェットの向きを変えて比べることはできます。
「パーツが少ないから調整できない」と諦める前に、まずは今ある1機で試してみてください。
調整の順番は一つではない|トップ選手の考え方
ここまで、13-まさまささんの方法を土台に、初心者が試しやすい流れを整理しました。
ただし、この順番だけが唯一の正解ではありません。
トップ選手でも、調整の入口や重視する部分は少しずつ異なります。
Mokky選手は「音」とシュート直後の挙動を見る
2024年G1福岡優勝、日本4位の実績を持つMokky選手は、まずブレードとラチェットの向きを確認します。
その後、使いたいラチェットとビットの候補を試しながら、特に次の2点へ注目しています。
- 回したときの音
- シュートしたあとの最初の数秒間の挙動
調整というと、最後まで何秒回ったかばかり気にしてしまいがちです。
しかし、シュート直後に軸がどう動き、どのくらいで姿勢が落ち着くのかにも、その組み合わせの特徴が出ます。
また、目では同じように見えても、音を聞くと違いに気づくことがあります。
調整は、目だけでするものではない。
耳も立派な調整道具です。
Mokky選手の詳しい考え方や、勝ち筋の作り方はこちらのインタビューでご覧いただけます。
おまんじゅうキング選手は、ビットを固めてラチェットを最後に選ぶ
2025年日本一のおまんじゅうキング選手は、次の優先順位で調整しています。
- ブレード
- ビット
- ラチェット
まずブレの少ないブレードを探し、次にビットを合わせます。
ラチェットはブレへの影響が比較的小さいと考え、最後に全体へ合うものを選んで完成させます。
そして、この考え方はスタミナベイだけではありません。
アタックベイも含め、ブレの少ない組み合わせを作ることを調整の入口とされています。
13-まさまささんのようにブレードとラチェットから候補を絞る方法もあれば、おまんじゅうキング選手のようにブレードとビットを先に固める方法もあります。
違うのは順番。
共通しているのは、一つずつ比べながら、ブレの少ない組み合わせを探していることです。
おまんじゅうキング選手の調整の優先順位は、こちらの記事で詳しく紹介しています。
使いたいビットが決まっているなら、ビットを基準にしてもよい
すでに作りたい動きが決まっている場合は、使いたいビットを固定し、そこへ合うブレードとラチェットを探す方法もあります。
たとえば、Bビットで持久勝ちを狙いたい、Rビットで攻撃と終盤の回転を両立したい、といった目的がある場合です。
このときも大切なのは、ビット・ラチェット・ブレードを一度に全部替えないことです。
ビットを基準として固定し、ラチェットだけ、ブレードだけというように、一つずつ比べます。
つまり、最初に固定するパーツは、必ずしも全員が同じでなくて構いません。
大切なのは「何を固定し、何を比べたか」
トップ選手の調整方法を並べると、順番の違いに目が行きます。
しかし、本当に持ち帰りたいのは順番そのものではありません。
- 基準となるパーツを決める
- 一度に全部を替えない
- 向きや組み合わせの違いを観察する
- 自分なりの判断基準を持つ
- 最後は実戦で確かめる
誰かとまったく同じ順番でなければ、正しく調整できないわけではありません。
自分は何を固定し、何を替えた結果、どう動きが変わったのか。
それを自分で把握できていることが大切です。
最初は13-まさまささんの具体的な手順をそのまま試し、慣れてきたら自分が違いを見つけやすい順番へ変えていく。
そんな進め方でも大丈夫です。
まとめ:手持ちのパーツから、ブレの少ない1機を探そう
- 調整は、手持ちのパーツの向きや組み合わせを比べ、ブレの少ない1機を探す作業
- 最初は優しく回し、揺れ・軸・音・シュート直後の挙動を見る
- 一度に全部を替えず、固定するパーツと比べるパーツを分ける
- 良かった組み合わせを記録し、最後は実際に戦わせて決める
- トップ選手でも順番は異なり、自分が違いを判断しやすい方法を作ってよい
調整と聞くと、細かな違いが分かる上級者だけの世界に見えるかもしれません。
でも、最初から完璧な1番機を作る必要はありません。
まずは、今使っているベイを優しく回してみてください。
次に、ラチェットの向きを変えて、もう一度回します。
軸の揺れは変わったか。
音は少し静かになったか。
終盤まで姿勢が残るのは、どちらだったか。
その小さな違いに気づくことが、調整の第一歩です。
強いと言われているカスタムを組むだけではなく、なぜこの向きにしたのか、なぜこの個体を残したのかを、自分の言葉で説明できるようになる。
そこまで来ると、そのベイは「有名なカスタム」ではなく、少しずつ自分の相棒になっていきます。
シュート技術を磨くこと。
そして、自分のベイを見て、聞いて、考えること。
手持ちのパーツから、自分の力でより良い組み合わせを探してみる。
その積み重ねが、ベイブレードをもっと深く、もっと面白くしてくれるはずです。
調整やカスタムで迷った場合は、LINEで手持ちのパーツや困っている動きを送ってください。
「ブレている気がするけれど、どこから比べればいい?」「使いたいビットは決まっているけれど、次に何を替える?」といった、ざっくりした相談でも大丈夫です。
👆ベイブレードの調整・カスタム相談をLINEで受付中です。
なお、調整のために最初からパーツを大量に買い足す必要はありません。
まずは手持ちのパーツで比べてみて、必要なものが見えてから、公式ストア・Amazon・楽天・量販店などの在庫や価格、セット内容を比較しながら選んでください。
パーツ単品で必要なものだけ揃えたい方には、当店も選択肢の一つとしてご利用いただけます。







